9話




 “血の契約”は、先輩騎士達の予想に反して成功した。
 おまけに久方ぶりの竜の宿主選出の報を、いち早く副総統に知らせた竜騎士がいたらしいのである。
 祝いの席に、リオートの姿を見つけてルーザの胸が、トクンと高鳴った。
嬉しいやら、動揺するやら・・。
 大部屋で行われた即席の酒場で、竜騎士達は、口々にヴィーザフの栄誉をたたえた。
 結構みんなそれぞれに心配していたのだ。
 大盤振る舞いに酒はふるまわれ、先輩方に肩を叩かれ、酒を注がれたヴィーザフの姿は、初めてやってきた時とは打って変わって、しおらしくなってしまっている。
 竜が彼を変えたのかも知れない。
 宿主と竜は、お互い影響しあうから。
 竜の親となった彼は、ただ猛々しいだけの青年では務まらないはずだった。


 酒はだんだん無礼講になってゆき、そのうち何気にヴィーザフがスー・・。と横に座ってくるのにギョッとなる。
「今日はありがとう・・。」
「その話は言わないで・・。私はなにも知らないから・・。」
 必死の形相でささやく雰囲気で、何か察しが付いたようだ。
 コクンとつぶやき、
「わかった・・でもなあ、君が竜騎士だったなんてなあ・・。」
 と言った瞬間。
「ルーザ。」
 と声がかかった。
 冷たい瞳で射すくめられて、背筋が凍る。
「時間は間に合うのか?北の塔の方様の、お世話の段取りは付けてきたのか?」
「はい・・一応。言ってありますけど・・。」
「一旦、部屋に戻るので、供をしろ。」
 命令されて、断わるわけがない。
「はっ。かしこまりました。」
 直立不動で答えて、サッサと彼の側による。
 リオート様の元へ・・。





       BACK         TOP        NEXT


ポチッと・・。

両翼の調べ

よければ一言。

Powered by FormMailer.