6話
「やっぱり・・・前より大きくなっているな。ルーザの胸。
誰かに揉ませている?」
「え?」
ふいに言われた言葉に仰天する。
リオートとは思えないセリフだ。
ビクッと体を震わせた雰囲気で、何となくわかったらしい。
男性経験が皆無な事を。
「その調子じゃあ、まだ大丈夫だな。」
なんて言ってこられるので、ルーザは、顔が真っ赤になってしまった。
粛々とした気分がいっぺんに吹っ飛んでしまい、顔をうずめられるこの行為が、とても恥ずかしいような感じになってしまって、
「リオート様・・なんて事おっしゃるのです。」
リオートの頭を外そうとする手を握られた。
胸に埋めたまま、心持ち顔を上げ、目だけを上向けてニヤリと笑うのだ。
こんな表情も、騎士団連中が見たら、卒倒するだろう。
ルーザだって、戸惑い、どうしていいか分からず佇んでいると、両手を離してくれた。
その後リオートは、自由になった両手で、ルーザの胸を触ってくるのだ。
ガッツリ掴まれたようで、優しい手付きだった。
その手は、ルーザの胸の上で妖しく動き出す。
「あっ・・。」
小さく声を上げるルーザに、目を細め、
「ルーザも16歳になるよな。年齢的からいっても、体も成熟してきてるだろ?
宿主が発情期に入ると、竜もその影響を受けて、生殖能力を持ち出す事例もあるらしい。」
(やっぱりそう言う事?)
竜のクーの変化を見たい故の行為だと知る。
ここでも竜が中心になっているのがリオートらしい所だ。
「リオート様・・。」
戸惑って、小さな声を上げるルーザに、ニッコリ笑いかけると、スッと手を離してくれた。
「人間の場合は複雑だから、一概にはあてはならないな。
ルーザの心はまだお子様だからな。
私としては、いつまでもあの時のままの、ルーザでいてほしかったりするんけれどね。」
なんて、懐かしそうにつぶやいたりしてくる。
(リオート様・・。)
「でも、そろそろお子様を卒業して、私の閨の中に、入ってきて欲しい気持ちもあるのも事実。」
軽く言って、立ち上がり、
「今日は、ここまででいい。御苦労だった。」
言って、スタスタ大卓のある場所まで歩いて行って、書類を広げたりしだすのだ。
「し・・失礼します。」
リオートが、もういいと言ったからには、これ以上はこの部屋にいてはいけない。
軽く礼をして部屋をでたのだが、ルーザは見事に混乱していた。
(そろそろ、お子様を卒業して、私の閨に入ってきて欲しい気持ちもある・・。)
「って、どうゆう意味???」
言葉を直訳すると、”リオート様の”夜の伽に召す相手として、指名が下った事になるのだが・・。
「私だよ?」
汗と泥にまみれて、下働きにこき使われる醜い自分を、リオートが指名するなんて、あり得ない話だった。
ただ竜遣いというだけでリオートの温情を受ける身で・・。
「・・・頭のおよろしいリオート様の事だもの。下々には、わからない意味を込めた冗談をおっしゃっているのだわ・・。」
まともにとって、意気揚揚として寝室に上がり、すぐさま降ろされる情けない自分の姿が、すぐにも浮かぶ。
そんな事になったら、それこそ城の中で美を競う、高位の侍女軍団にバカにされ、あざ笑れ、さすがのルーザも立ち上がれないショッキングな出来事として、皆の記憶に残ることになるだろう。
「まともにとったら危ない危ない。」
ブンブン頭を振って、重い吐息を吐いて、トボトボと北の塔に戻ってゆくのだった。
(今日はさっさと体を拭いて、眠るに限るわ・。)
心の中でブツクサ呟いて、侍女達が眠る大部屋に戻ってゆくのだった。
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